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歴史の転換点―
戦後日本の復活の象徴―
しばしば東京五輪はこう例えられる。
それは光。しかし、光もあれば影もある。
本作品は光の当たらない部分に焦点を当てた作品である。

今回は東京五輪アーカイブと称し、首都大学東京渡邉研究室と
朝日新聞フォトアーカイブの共同研究の一環として制作しました。

写真とは中国語の「眞を寫したもの」に由来する。
さまざまな写真からさまざまな物語が生まれる。物語は、写真を眺める人が生きる時代の移り変わりにつれて、大きく変わっていく。2010年代を生きる私たちは、東京五輪にまつわる過去の写真から、どのような物語を読み取るのだろうか。

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東京五輪開催が決定、一礼する東京市職員


昭和11年、4年後の1940年大会の東京開催決定を受け、東京市(現東京都)の職員たちは明治神宮に参拝した。太平洋戦争前夜を生きた彼らは、神に何を語り、誓い、頭を垂れたのだろう。現代の日本人が探しあぐねているこころの拠り所を読み取ることができようか。

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消えた東京五輪


東京オリンピック。1964年、アジアで初の五輪が日本で開催された。しかしその24年前に、東京で五輪が開催されるはずだったことを知る人は少ない。東京での開催が決定した翌年の1937年、盧溝橋事件を発端として、日中戦争が勃発する。国際社会において孤立を深めた日本は、五輪の開催権を返上する。1940年東京大会、そして1944年ロンドン大会の計画は、第二次世界大戦によって烏有に帰す。

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敗戦


1945年8月15年、敗戦。口を固く結び、うつむく女学生の頰には、涙があっただろうか。戦争に青春を捧げ、敗戦で全てを失った。日本は連合国の統治下におかれ、軍部は解体され、民主主義国家として再スタートした。平和憲法に代表される、現在の日本のルーツがこの一枚に刻まれている。戦争は日本を変えた。そして、戦争が世界にもたらしたものは、他にもある。

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夢に見た東京五輪


敗戦ですべてを失くした日本にとって「東京での五輪開催」は、国際社会への復帰を意味した。新たな日本、生まれ変わった日本を、世界にアピールする機会である。焦土から立ち上がり、わずか二十年ほどで復興を成し、五輪大会が実施できる一人前の国家として、ついに認められたのだ。国民は狂喜し、東京五輪は社会現象となっていく。

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沖縄の聖火


日本全国に引かれた4通りのコースを聖火ランナーが駆け抜けた。聖火は沖縄にもやってきたが、聖火台の上には、日の丸や五輪旗よりもはるかに大きく、星条旗が掲げられていた。当時、沖縄はアメリカの統治下にあり、祝祭日以外に日の丸の掲揚は禁止されていた。しかしこの写真には、笑顔で日の丸の旗を振る生徒たちの姿が写っている。

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パラリンピック


パラリンピックとはなんだろう。“Parallel”なオリンピック、もう一つのオリンピック。現在はもちろん、障がい者が活躍するスポーツの祭典として社会に位置づけられている。しかし、パラリンピックはかつて戦争の副産物として生まれたものである。傷痍軍人たちが集う、リハビリテーションを兼ねたイベント。それが時を重ねるにつれ、障がい者の運動競技大会へと変化していったのだ。

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The Oriental Witches


東洋の魔女、“The Oriental Witches”。64年大会を知る人は、語り草にしてきたことだろう。バレーボールの当時の主流を逸脱した数々の戦法は、世界の度肝を抜き、圧倒した。猛練習から編み出された“回転レシーブ”“変化球サーブ”などの技は、金メダル獲得につながり、時を越えて現代バレーの基礎となった。さらに「ママさんバレー」のブームを生み、競技人口のすそ野を一気に広げたといわれる。

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”スポーツ”


私たちは今、年齢や立場を問わず、専門家から専用のグラウンドや施設でスポーツの指導を受けることができる。こうした恵まれた状況は、東京五輪が生み出したものかもしれない。日本にオリンピックがやってくる。子どもたちはまず野っ原でスポーツを始め、大人たちは健康を志向した。スポーツの祭典は社会を活性化し、希望を抱かせた。高度成長期の好況を背景に、実業団チームが次々と生まれ、サッカーやバスケットボールなど10以上のスポーツが国内リーグを結成した。東京五輪はスポーツの喜びとエネルギーを社会にもたらしたのだ。

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TOKYO 2020


2020年、東京に再び五輪がやってくる。半世紀を越えて戻ってきた聖火は、東京の空を憶えているだろうか。敗戦のどん底から「東洋の奇跡」とも呼ばれた復興を遂げ、64年大会を呼び寄せたかつての日本。聖火は私たちに今度はどんな奇跡をもたらすだろうか。世界、そして日本人が待ち望む東京五輪。この半世紀のうちに、私たちが失った“何か”を、五輪を契機に取り戻せるだろうか。長い空白期間は人を変え、国を変えてきた。しかしスポーツは変わらず、人々を魅了し続けている。スポーツには人を、国を、未来を変える力が宿ると信じたい。

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